前回の記事で2024年度の科研費ランキングトップ20を発表しました.
今回は2001年度から2024年度までの科研費の推移を載せていきます.
この24年間で科研費はどのように変化してきたのか見ていきましょう.
今回のデータは日本学術振興会によるデータになります.
科研費の配分機関数の推移
まずは科研費が配分された研究機関の数がどのように推移してきたのか見ていきましょう.
この24年間で増加したのか,減少したのか.それは以下のグラフの通りです.

縦軸が800~1500になっていることに注意してください.
グラフから分かるように配分先は増加傾向にあります.最も少なかったのは2001年で901機関,最も多かったのは2024年で1377機関でした.つまり,この24年で1.5倍以上に増加したことになります.
毎年単調に増加しています.増加の度合いは近年は少し緩やかになっていますが,それでも増加は続いています.
では次に,科研費の総額がどのように推移してきたか見てみましょう.
科研費の総額の推移
科研費の総額はこの24年でどのように推移してきたのでしょうか.そのグラフは下になります.

縦軸が900億円~2500億円になっていることに注意してください.
科研費総額も研究機関の増加と同様増加傾向にあります.最も少なかった年は2001年で1093億円,最も多かった年は2021年で2218億円です.科研費の総額は2倍以上増加しています.
研究機関が増加しているので当然と言えば当然ですが,総額の方が研究機関数よりも増加の度合いが大きくなっています.
近年は,増加が落ち着いており,若干の減少になっています.2021年の額が多かったのはコロナの関係があるのでは無いかと予想されます.
配分額が多い研究機関が占める割合
続いて科研費の配分額が多い研究機関が全体に占める割合について見ていきます.
配分額が多い研究機関の割合が減少していれば,配分された研究機関が増加したことによる寄与が大きいとがんが得られるでしょう.逆に増加していれば,研究機関の増加による影響は小さいと考えられるでしょう.
では,配分額が多い上位20,50,100の研究機関が占める割合を見ていきましょう.



このように,上位の研究機関が占める割合は減少傾向にあります.
ただ,よく見ると51~100の機関では増加傾向にあります.
まず,上位20の研究機関について見てみるとおよそ8%の減少になっています.ただ,総額が倍増していますので,配分額としては増加していることに注意が必要です.
上位20の研究機関に全体の半分以上の科研費が配分されています.つまり,上位1.5%が半分以上を占めているのです.また,上位100の研究機関ではおよそ80%を占めています.
このデータからこの24年で上位100未満の研究機関に配分される金額は314億円増加したことが分かります.
より多様な研究機関に科研費が配分されるようになったことが分かります.
上位研究機関の内訳
科研費の配分額が多い研究機関にどのようなところが含まれているのか見ていきましょう.
まずは上位7の研究機関について見ていきます.上位7の研究機関はこの24年間変わらず常に同じ研究機関でした.それは以下の通りです.
- 東京大学
- 京都大学
- 大阪大学
- 東北大学
- 名古屋大学
- 九州大学
- 北海道大学
これを見て何か気づくことはあるでしょうか.
そう,いわゆる旧帝国大学です.歴史のある大学への科研費の配分は多いようです.
また,この7大学の金額の順番もほぼ変化無く上の順番の通りでした.

このグラフは旧帝国大学の科研費額の推移です.ほとんど順番の入れ替わりが無いことが分かります.そして,東京大学,京都大学の配分額は圧倒的であることが分かります.
また,これらの大学は近年は金額もかなり落ち着いているようです.
上位7の研究機関について24年間で全く変化が無いのは面白いですね.
続いて上位20の研究機関についても見ていきましょう.
こちらもほとんど入れ替わりはありません.上位20に入るのは下に示す22の研究機関である場合が大半です.
- 東京大学
- 京都大学
- 大阪大学
- 東北大学
- 名古屋大学
- 九州大学
- 北海道大学
- 東京科学大学(旧:東京工業大学)
- 筑波大学
- 国立研究開発法人理化学研究所
- 慶應義塾大学
- 神戸大学
- 広島大学
- 岡山大学
- 早稲田大学
- 千葉大学
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 金沢大学
- 東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)
- 熊本大学
- 新潟大学
近年ではここに大阪公立大学も加わるようになってきました.
これを見て分かるとおり,科研費の配分が多いのは国立大学です.私立大学としては慶應義塾大学と早稲田大学であり,国立の大学以外の研究機関としては国立研究開発法人理化学研究所と国立研究開発法人産業技術総合研究所でした.
2024年度の具体的な金額は1つ前の記事に掲載していますので,そちらもご確認ください.
基本的には総合大学であり,単科大学は東京科学大学のみとなりました.大学について言えばやはり,難易度が高い大学の方が科研費の配分も多い傾向にあります.
また,私立大学について言えば,慶應義塾大学が早稲田大学よりも配分が多いのは医学部の有無による影響があるのでは無いかと考えられます.
まとめ
以上,科研費の推移でした.
以下に今回の要点をまとめておきます.
- 科研費の配分先は24年でおよそ1.5倍に増加
- 科研費の総額はおよそ倍増
- 配分額が多い上位の研究機関が前提に占める割合は減少傾向
- 配分額が多い上位7機関は全て旧帝国大学で24年間で変化なし
- 上位20の研究機関についてもほぼ変化なし
- 上位20のうち私立大は慶應,早稲田のみ
- 上位20のうち大学以外は理研と産総研のみ
もし,高校生で大学での研究を頑張りたいという方がお読みでしたら,参考にしてください.
今回のデータがお役に立てば幸いです.
大学に配分されるお金は科研費だけではありません.国立大学では運営費交付金,私立大学では私学助成金があります.次回はこれらについて調べていきたいと思います.
また,前回の記事では2024年度の科研費額が多かった大学の順位と金額をまとめています.是非ご覧ください.
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